反 復

堀 剛

1


遥かな記憶の中の君だから

カタチを取り戻すなんてヤボだと

せせら笑いをしながら歩いている

通りをぬけると

ここから先は

会話までもよみがえる 御堂筋

わずかなステップで

君との別れが始まり

始まった別れは今も続いているのです

などと

言い方を工夫すると何やら

今でも続いているような気になったりして

僕はもう

君の座ったカフェのイスに腰掛けて

君とおなじ あの晩のメニューを注文している

2


親たちの世代で

「上海帰りのリル」が流行ったというけれど

十二才の僕はこの唄が好きだった

口遊んでみると

女の子を追いかけていたあの頃になる

だから僕には

反復することが大切で

ラブレッスンを中二ですませた僕は

ちょっとしたものだと思いながら

結局 南まで歩いている

あの日は雨ではなかったのだから

今日も雨ではない

あの日は南のバーゲンでもなかったのだから

今日も違うだろうと思ってみたりする

月のない夜だったけれど

やたら街は明るくって

僕らは 途中

中之島公園で

うす汚い男に見られたり

覗かれたりしながら

歩いたのだ

3


君の会話がくもりだし

僕の心がくもらされ

結局 僕らの別れは

今も続いているのですなどと

うまい言い方を思いつく僕と

君との距離が開きだしたのは

なぜかなどと考えながら

結局 僕は

南から北へと歩きなおしている

君と出会ったのレストランまで戻ってみないと

もう家には帰れない

戻れない僕だから

だから

明日まで待てずに

僕は今も反復している

ガキの頃のレッスン

もう一度

「上海帰りのリル」などを