思考のための連詩

堀 剛

1


想起する

僕らの記号

「世界」について

見えるものについては

見えると告げる

感じるものについては

感じると告げる

記号について

世界についても

少しは分かり合うために

2


少しばかりの主語に

形容詞

すると世界が記述される

語りの背後で

世界はいつも

ほんの少しの空間と時間を必要とする

何かが終わる瞬間にも

3


僕は震えている

記憶の中の

一切の僕について思うとき

未来について考えている僕がいて

考えている僕が現在にいることについて

小さな思い過ごしでは

宇宙は壊れはしないのだ

だから嘘ぶいてみせる

言葉の量だけ世界が動くなどと

4


論証された数学的命題が

論証の内部に存在するとすれば

僕は僕の現在について

どのように示すのか

雨音が

確かに

僕にも、君にも聞こえてはいるのだが

僕の外部へ僕は行けないのか

5


君はたたずみ

僕を見る

僕はベンチに腰掛けたまま

君を見る

僕らの遠い時間の彼方に

ノエシスとノエマが交差すれば

確かなストーリーを語り合えるかもしれない

あるいは

意味の成立の偶然について

静かに頷き合うかもしれない

世界はいつも

言葉の量ほども

存在したためしがないのだとしても

6


僕の意思を君にテレポートしてみたくて

僕の言葉が君のノエマに重なれば

きっと

言葉なしで

意味なしで

通じるに違いない

7

言葉が枯れる日

言葉が消滅する日

世界も消滅するのだろうか

それとも

僕らも消滅するのだろうか

存在に向かって問うてみても

あらかじめ

世界が閉ざされていることに気づかなかったからか

8

世界とは方向の無い「事実」だったなどと

僕は言いたくはないけれど

なぜ僕らはここにいるのだと

世界を前に問い始めている

ありきたりの力で

歌ったり、語ったり、問いかけたり

閉ざされた世界の中で、世界の意味を語ろうとする