UFO 堀 剛
アンカレッジ到着三分前
もう氷河や自動車すら見える高度だ
雪の大地に
確かな光体を見たのだけれど
「見た」という「事実」について
「フラッシュのように光を放ち移動した」と
語ってしまえば終わりだ
かかわる形容詞がない
動詞も
副詞だってないのだとしたら
あらゆる事実は方向を失う
僕らに
「見た」僕はありえても
見られたものが存在するなどと
とても言えない気がして
僕の行為は確かに存在したなどと
言い切るだけで終わっていく
1988年1月15日
大阪発AF273
あるいは
世界とは方向のない「事実」だった
などと
僕は言いたくはないのだけれど
出典:アセンダント3 執筆19890902