何かになりたい 堀 剛

「俺は俺になりたい」などとは 何と唐突な言葉だろう 何かになりたいと思ったのは 中学一年生の頃だった 無線通信士に始まって レーシングドライバー 物理学者 どれもこれも夢のままで終わってしまい 今はそれなりの容器に入れられたように納まっているのだが 何かになりたいと思っていた僕とは いったい何者だったのだろう きっと、この世の何になっても 何かになりたいという思いは消えはしないだろう 何になっても何かになりたい 何かになっても別の何かになりたい あるいは 何かになっても僕こそ誰かを知りたい だから僕は僕になりたかったのだと 今日は、一人呟いている

出典:「アセンダント」執筆19991213