遠いメロディ 堀 剛
少年の頃
「禁じられた遊び」を初めて聞いた
長い髪の少女が奏でてくれた
黄色い弦
美しいメロディーが溢れていた
母一人
子一人の家庭から
やがて養女となって
見知らぬ街へと去っていった
やがて再会もしたが
ギターを僕にくれるなどと言い出した
淋しさで、もう、ギターなどつま弾くことも出来なかったのか
大切なものだからと
僕は断ったのを覚えている
いつしか
僕らは会えなくなってしまったのだが
傍らにエーちゃんもいた
僕らは十二才だった
戦争で片腕を落とした親父
兄貴、姉、姉の亭主
二間たらずの住宅に五人で住んでいた
エーちゃんの母は亡くなったというが
「おまえはどこへ行ってしまったんだ」と
親父が酔ってつぶやくのを時々聞いたという
「禁じられた遊び」は
エーちゃんの兄貴も奏でてくれた
僕にギターを教えてくれた
それからおよそ十年
街で出会ったエーちゃんは子分を二人連れていた
何かあったら俺のところに来いと言っていた
でも、僕は知っていた
エーちゃんがそんなに強くもないことを
貧しく育ったエーちゃんは
ひ弱な体力しかなくて
子供の頃
どんなにいじめられていたかも
「禁じられた遊び」を初めて聴いた時から
もう三十年以上の歳月となるが
突然、僕はギターを手にした
つま弾けば
響いてくる
黄色い弦La Bellaの
あの頃の
遠いメロディを奏でてみた
何も変わっていないものがあるとすれば
この曲くらいかも知れない
みんなどこへ行ってしまったのか
遠いメロディーに包まれて
旋律の彼方に
少女やエーちゃんの姿が揺れる
今では僕も「禁じられた遊び」を奏でてはみるのだが