葬送儀礼と癒し  1/6  "Funeral Ritual and Healing"

堀 剛

(本稿は神戸国際大学経済文化研究所年報第23号2014年4月に掲載していただいた論文を改稿したものである。)

序文  今日の日本の葬儀の動向と直葬

葬送儀礼は文化、歴史、時代の中で変化をくり返してきたと言えよう。今日の日本社会においても、葬儀は大きく変化している。2000年代に入ってから「直葬」が行われるようになり、首都圏では相当な広がりである。最近はインターネットで「直葬」と入力して検索すれば、それに直葬する葬儀社一覧が出てくる。それほど、直葬が身近なものになって来ている。

今日、直葬が増えている理由は、概ね次のように整理できよう。

①経済的事情により葬儀費用を抑えたい。また、葬式費用が高額でありすぎるため葬儀を控える。

②死に行く人の高齢化によって、葬儀への参列者が少数となるため、葬儀を行わない。

参列者が少なすぎるので、儀式としての葬儀があまり意味をなさない。

③宗教への無関心、忌避等により葬儀に意義を見出そうとしない。

③その他

これらの中で微妙な問題を含むのは経済的事情によるものであろう。たとえ葬儀を行うことを死に行く人や遺族が望んでいたとしても、費用を捻出できなければ誰も葬儀をできない。よって、やむなく直葬を行う場合も考えられる。このような場合、葬儀の当事者の意向よりも経済事情が先行しているのである。

本稿では葬儀に必要なものは何かを明らかにし、葬儀の形態の一つとして直葬が許容されるのかという点を考察する。また、葬儀の本質とは何であり、葬儀には何が備わっているべきなのか。あるいは何が欠けてはならないのか。それとも欠けても良いものとは何かを考えてみたい。